湿田で活躍するウィングハローWDZシリーズ!軽量設計の外部油圧仕様で「速く、綺麗に作業ができて、気持ちが良い」 取材先:茨城県稲敷市 原 文男氏

アグリマシーン

  還暦を過ぎればサラリーマンはそろそろ引退を考えるけど、農業では還暦を過ぎてから本格的にという人も多い。農業従事者が減少する中、地域農業の担い手ならば60代、70代であってもその身に受ける期待は大きい。しかし年齢と共に体がきつくなるのは事実で、5年、10年と年を重ねるごとに、期待と現実のギャップが負担になっていく。

  そこで大きな力になるのが農業機械だ。先進の農業機械が高齢化する担い手農家を支え、日本農業の持続力を高めていく。30haの経営面積で稲作を展開する75歳の担い手農家が新たな力としたのは、代かき作業の品質向上と負担軽減に貢献するニプロの新型ウィングハロー。その作業現場を訪ね、実際の感想や使い心地を聞いた。

75歳、30haを経営し、地域の担い手を務める

 北に霞ヶ浦、南に利根川、その間の水郷地帯にあって、豊富な水を水源に稲作を展開し関東有数の米所と呼ばれているのが茨城県稲敷市。原文男さん(75歳)はそこで稲作30haを経営している。「生産しているのはお米だけ。皆さん年をとってきて、任せたいということで、規模が拡大している」。元々の自作地は3haだったが、時代の流れに合わせて拡大してきた。

 地域の区画は1haから30a、幾つもの圃場を管理しながら、あきたこまちをメインにコシヒカリや今年からは飼料米も手がける。水は豊富に有り、生産環境は比較的恵まれているが、近年の異常気象では、ゲリラ豪雨や長雨などで稲穂が水に浸かることもあり、安定生産を脅かす新たな脅威にも対応しながら、地域農業の担い手を務めている。

 しかし「もうそろそろ年齢が年齢だし、息子に任せたい」との想いもある。息子さんは52歳。既に農作業を共にしているが、息子さんには他にも仕事があって兼業の状態。原さんが地域農業において求められている役割は、今しばらく続きそうだ。そんな中、30haを管理するために大きな力となっているのが新しい農業機械だ。

原 文男さん

圃場の土質にあった代かき機が大きな力に

 トラクタを50馬力から70馬力へとグレードアップし、田植機もGPSによる直線キープ機能搭載機を装備した。「誰でも真っ直ぐ植えられるから、便利でいいよ」。トラクタの馬力アップにあわせて作業機も新しくなり、耕うん作業で導入したのはニプロのグランドロータリー。すき込み性能を大幅に向上させたもので、「稲株をよく埋め込んでくれて、秋起こし、春起こしが1回ずつですむ」と、作業負担の軽減に繋がっている。そして代かき作業には、それまで使用していたハローの更新時期に合わせ、70馬力の新型トラクタにマッチし、さらなる効率化を可能にするものが求められた。

 この辺りの圃場は粘土質の湿田で、重い作業機は足がとられる。そうなると作業機は重量の軽い電動仕様が良いのだが、せっかくの高馬力を活かした選択も捨てがたい。外部油圧仕様にすれば開閉がスピーディーで作業がスムーズに進む。ただその高馬力に合わせて耐久性も欲しい。そんな思案の中、市場投入されたのがニプロウィングハローWDZシリーズだ。外部油圧仕様で油圧シリンダーによるスピーディーな開閉作業を実現しながら、軽量設計で強化部品も採用し耐久性も高い。

 「通常の外部油圧のものだとここは地盤が軟らかく、作業機が重くなってトラクタの後部が沈んでしまう。だから軽さはどうしても必要」。その条件を満たし、原さんのトラクタ、圃場の状況、経営規模にぴったりと当てはまったのがWDZ4200N(機体重量:570㎏)。「本当に良い物をだしてくれたよ」。今春から原さんの現場に加わった。

ウィングハローWDZ4200N

1、2回まわるだけで綺麗になる

 以前は作業幅3.8mの電動タイプのハローで代かき作業を行っていたが、作業ははかどらなかった。「圃場の中を何回もまわって、それでもうまくいかず、散々な目にあった」。しかし、今年の代かき作業の現場にはそれまでとは違う風景があった。「トラクタを圃場に入れて、2回もまわれば、稲株が綺麗に埋め込まれていくんだよ。1回ですむこともある」。また春起こしにすき込み性能を向上させたグランドロータリーを使っていることもあって、荒代を行わず、本代1回だけの作業となっている。作業量が半分になったということで、「燃料費も1/2になった」。作業スピードも速く、原さんは6速で作業し、周囲の人より倍ほど速い。40aなら、2回まわっても40分ほどで作業を終える。

 速くて、綺麗な仕上げを可能にしているのは様々な機能、工夫が組み合わさってのことで、まずロータリー部には3D曲線を持つL814爪が採用され後方への吐き出しを抑えながら細かな砕土を行っている。先端部が肉厚で耐摩耗性も高い。加えて大型スプリングレーキが綺麗にワラを埋め込んでいく。ロータリー部前方にはラバーグレーダーが備えられ、トラクタ側への泥はねを軽減する。「キャビンが泥で汚れなくて、作業がしやすい」。また両端の爪は、土寄せ爪M290Gとなっており、土の流れを内側へと向ける。「以前は両横から泥が出てきていた」が、新型は横への吐き出しが抑えられている。タイヤ跡を消すソイルスライダーは可動式で各後輪の内・外に配置して、走行跡を綺麗に消していく。

作業機両端に土寄せ爪(紫色の爪)があり、泥の横への吐き出しを抑える
大型スプリングレーキでワラ等を綺麗に埋め込む
可動式ソイルスライダーによりタイヤ跡が残らない
泥の横への吐き出しを抑制する

Point:外部油圧仕様で油圧シリンダーによるスピーディーな開閉作業と湿田地区に対応する軽量設計で、高機能・軽快な作業を実現する。

ここが一押し:タイヤの内外に配置し、上下・左右の調整でタイヤ跡を消す

高齢化する担い手農家の力に

 「一番気に入っているのは、1、2回まわっただけで、稲株の浮きもなく、圃場を綺麗にできるというところ。本当に良い物を出してくれた。最高だよ」。労力軽減、作業時間短縮で、春の農繁期における生産者の負担を軽くすることに、大きく貢献している。

 後継者が不足し、農業従事者が減少する中で、生産規模の拡大が進められてきているが、担い手農家の高齢化も進んでいる。その状況下で農業の持続を図るためには、負担を軽減する機械の現場投入が欠かせない。作業を終え、原さんは「速く、綺麗に作業ができて、気持ちが良い」と語る。そこには印象的な笑顔があった。ストレスのない作業の価値は大きい。

松山㈱:長野県上田市(TEL0268ー42-7500)

公式YouTubeチャンネル

参考動画:ニプロウイングハロー WDZシリーズの紹介動画
アグリバッファ

アグリバッファ

農業の大きな可能性を感じているあなたに、 アグリソリューションとアグリマシンをお届けする 情報共有ベースです。

関連記事

特集記事

アグリバッファ

アグリバッファ

農業の大きな可能性を感じているあなたに、 アグリソリューションとアグリマシンをお届けする 情報共有ベースです。

ランキング

  1. 1

    施設園芸のニューノーマル モイスカルチャーで気候変動に負けない! 取材先:三重県多気町 ㈱ポモナファーム

  2. 2

    汗かく野菜産地で農業を学ぶ「牛窓甘藍(かんらん)で産地を元気にする」 取材先:岡山県瀬戸内市 JA岡山牛窓キャベツ部会

  3. 3

    一人じゃ勝てない!担い手間連携で、これからの農業をつくる 取材先:新潟県 津南町 株式会社 麓(ろく)

ピックアップ

  1. 春収穫の地域特産タマネギを増やして異常気象に対応し、産地間の競争力にも 取材先:JAあいち中央碧南玉葱部会 小笠原 諭部会長

  2. “そば”の力で地域活性化 幻の在来種そばを復活させて日本一のそばを目指す 取材先:長野県・伊那市 信州そば発祥の地 伊那そば振興会

  3. 世界に開け!ジャパンアグリ サツマイモ輸出と6次化商品のショップ展開、観光農園で地域農業をグローバル化 取材先:㈱KOGANE ㈱シルクファーム

先進事例 地域活性化 オススメ
  1. 速く、思い通りの仕上がり!耕速シリーズで利益率向上 取材先:熊本県上益城郡御船町㈱幸運

  2. 水田での緑肥活用を探る 米専業の大規模生産者が選んだ、前に進むための改善 取材先:千葉県いすみ市㈲増田ライスファーム

  3. 農業×SDGs: ながいもから電気/耕作放棄地をブドウ畑に/ヤマネコを守る米づくり

  1. 会社員からスイートピーの生産者に! 経験や勘をデータ化し農業持続の力に 取材先:岡山県倉敷市 木下良一さん

  2. 荒ぶる自然に挑戦し、夏と闘いながらブランドすいかをつくる 取材先:山形県尾花沢市 すいか生産者 大山佳彦

  3. ギネスに挑戦 糖度30度超えの甘い桃で選ばれる商品づくり 取材先 大阪府岸和田市 マルヤファーム

  1. 施設園芸のニューノーマル モイスカルチャーで気候変動に負けない! 取材先:三重県多気町 ㈱ポモナファーム

  2. マーケットインで農産物輸出 現地バイヤーと密に繋がり、ニーズに対応 取材先 三重県津市 農業生産法人㈱いのさん農園

  3. 女性の感性と梅を活用した本気の6次産業で世界を狙う 取材先:和歌山県有田川町 ㈱ふみこ農園

TOP