後悔のない選択には十分な情報が必要だ。しかし限られた選択肢しかなく、幾ら考えても、帯に短し、たすきに長しで、結局妥協の選択をすることも少なくない。ただ近年、情報化社会が進展し、ネットなどの普及で情報を得るコストが下がり、選択肢が増え、望むものに辿り着く可能性は高まっている。
今お使いの農機、それがベストの選択なのか。多様な生産環境、それぞれが目指す先を考えれば、違う選択があったのではないか。今回、コストを抑え利益率の向上を目指す生産者を訪ね、その選択にこれからの農業を探る。そこではササキコーポレーションの超耕速シリーズが農業の進め方を変えていた。(記事中の数値・状況は2021年11月現在)
竹堆肥で高付加価値米の生産
新しい機械や栽培方法について、どこから情報を入手すればいいのか。それに対しユーチューブが大きな参考になったと言うのが、熊本県上益城郡御船町の吉澤幸運さん(56歳)。「トラクタの馬力をアップしたので、それに見合うハローを探していて、ユーチューブでマックスハローエースに出会いました」。農業生産法人㈱幸運の代表取締役であり、日々水稲生産の現場に向かい合う。
栽培品目はヒノヒカリで、今年はそれを10ha、作業受託を13haの規模で展開している。労働力は本人と従業員2人、それに加え農繁期に人を雇うが、「少ない労働力で如何に効率を高め、コストを下げて利益率を上げるか」をテーマとして経営に取り組む。
最初は山の仕事をしていた。「間伐材を伐って販売していたのですが、時間もあり、実家が農家だったので農業にも携わるようになりました」。次第に地域の田んぼも預かるようになり、農業生産法人㈱幸運を立ち上げた。山では竹の繁茂が問題となっていて、その伐採が仕事となった。それで伐った竹を、おからと混ぜて、竹堆肥を生産し、「植物性堆肥を使った“幸運米”として販売しています。アレルギーの方などに好評です」。その付加価値に慣行栽培米の3倍以上の値がつく。
YouTubeで情報を収集し代かき機とあぜ塗機を購入
地域は緩やかな傾斜に有り、1反半ほどの小区画や変形田が多い。また獣害も多発し、最近ではお米に高温障害も出てきた。今年は天候不順で作況は不良。しかも米価が大幅下落で、1俵単価は昨年を3000円ほど下回る。地域の農業にとって追い風を探すのが難しい状況だ。
その中、付加価値を付けた幸運米は米穀店からネットを通して固定客に販売され安定収入が見込める。また作業受託に取り組み米販売以外の収入減を確保している。逆風にあっても時代の流れを見て柔軟に取り組む姿勢が見える。そんな吉澤さんがこの春導入したのがササキコーポレーションの超耕速シリーズ、マックスハローエースMAX414DXAとカドヌールエースKA530DXだ。
「昨年は1日16時間も代かきを行い、もう限界だと思って、ハローを持っている農家に助けてもらいました」。そんな状況を劇的に改善したのがマックスハローエース。「ユーチューブに実演の様子がアップされていて、最初、5.5㎞/hの代かき作業なんて信じられませんでした」。
それを確かめるため、幾つもの動画を視聴し、そこに示された数字の比較検討を行い、様々な情報に当たり納得いくまで調べた。最後は実機で確認するのが普通だろうが機械がその地域にはなく、結局、実物を見ずにカドヌールも合わせて購入。周囲は驚いたが、後悔するようなことは何も無く、期待通りの働きをしている。
これまで使ってきた機械とはまるで違うもの
「今まで経験してきた機械とは全く違います」。新形状の爪や耐久性の向上など高速作業を実現する工夫が随所にあった。またそれを活用するために代かきの方法も変わった。「水を深く貯めず、水面の見える割合が1/3ほどの浅水にして代かきを行います。終わった後は水平の潟のようになり、稲わらの浮きもありません。また水の入口から出口に向かって緩やかな傾斜を付けたいのですが、ほ場の表面が見え、思うように土を引っ張っていけます」。泥の流れを内側にするサイドレベラーや土寄せ操作が電動で行え、狙い通りの作業が行えるようだ。また導入以前は荒代ともう一度田植え前に代をかいていたが、一度の代かきで田植えに臨めるようになった。作業スピードは様々な作業条件の中、「私の場合、4㎞/hが最適です。試行錯誤を重ね、この性能を100%使い切っていきたいですね」。
またリバースあぜぬり機カドヌールエースの満足度も高いようだ。「作業速度は1.6㎞/hほどで、以前の倍の速さです。一方が土手で3面の畦塗りで済ましていたところがありましたが、今年はしっかり4面塗りました。それと作業の様子を見てか、畦塗りを頼まれることが増えました」。出来具合は「階段状にカットした元畦が新畦を支える構造や、しっかりとした締め込み、畦肩の押し込みなどで丈夫な畦がつくれます」と評価が高い。ほ場の角はリバース機能で対応し湾曲のある変形田でも力を発揮している。
Point:プロが求める高いレベルの作業を高速で実現し、人件費、燃料代などのコストダウンに貢献する。また高速作業に耐えうる強靱なボディを採用し、高い耐久性を持つ。
ここが一押し:泥の流れをより内側へ変え、ワラ・土を逃がさない
トータルコストの低減で利益率を高める
超耕速シリーズ全体の評価を「作業スピードが速く、その上で思うように仕上げることができること」とし、それを活用した今年の稲作は「利益率が向上します。今年高齢でお辞めになった作業の方がいましたが、人員を補充することはありませんでした」。効率的な作業で人件費が節約でき、燃料代も少なくてすむ。トータルでコストが減少していく。耐久性も高く「価格にはそれだけの価値がある」。
これらの機械に続いて超耕速シリーズのアクティブロータリーACE192Rの導入も決めている。超耕速シリーズで「私の農業は変わりました」と吉澤さん。今後は作業受託をもっと増やしていきたいという。「大事なのは利益です。利益率を高める方法を探っていきます」。広い選択肢の中から選んだ超耕速シリーズが、米価が低迷する中、新たな可能性を広げることになりそうだ。
㈱ササキコーポレーション:青森県十和田市(農機営業部製品窓口TEL0176-22-0170)