生産資材費が高騰し、米価が多少好調であってもそれを打ち消すような現況だ。その中、土地利用型の農業では、従来から経営の安定化を図るため、水稲に加えて麦、大豆などを積極的に取り入れ、水田の高度利用が進められているが、そこでネックになっているのが追加の機械費だ。コスト増が経営を圧迫してしまっては売上を伸ばしても持続性を確保できない。そこで機械を選ぶ一つのポイントが汎用性だ。
稼働率の高さは経営に貢献する。今回お訪ねした生産者が導入したのはアグリテクノサーチの高速汎用施肥播種機クリーンシーダNTP−8AFP(8条)。1台で様々な作物に対応可能で高速作業も実現する。それらの機能が実現する生産現場の実際を聞いた。
限られた農地で成長するため、新しい機械でコスト低減を図る
愛知県中南部に位置する西尾市は、温暖な気候と平坦な地形に恵まれ、稲作に加えて、麦の生産では反収が600㎏に迫るなど、土地利用型の作物が意欲的に栽培されている。その他丘陵地はてん茶の一大産地となり、花き、野菜も生産され多様な農業が繰り広げられている。その中で、米25ha、麦20ha、大豆20haを2年3作のブロックローテーションで栽培しているのが三矢農場代表の三矢浩隆さん(42歳)。同地域は「ありがたいことに若い後継者がたくさんいて、余剰地がほとんどない状態です。ここでは規模拡大の視点で経営していくことは現実的ではありません」。成長のためには新たな展開が必要になる。
同農場は本人と三矢さんの父親、弟の3名が働く家族経営。生産している米は、コシヒカリと“あいちのかおり”で、収穫した米はJAと卸業者に各4割を出荷し、残り2割を直売している。大豆と麦は全量JA出荷。
お米の生産では、栽培面積の約半分で乾田直播を行っているのが特徴的。「乾田直播の取り組みは7年ほど前から始めました。面積が増えてきたので、育苗の手間を解消して、作業の効率化を図るためです」。しかし、これ以上の規模拡大が難しく、限られた農地で如何に収益を拡大していくかが求められており、省力化や効率化を進め、コストを抑えることに重点が置かれている。そのためにドローンや営農管理システムなど省力化、効率化に向けた新しい機械や技術を積極的に取り入れ、今回、機械コストを低減することに繋がるものとして導入されたのがアグリテクノサーチの高速汎用施肥播種機クリーンシーダNTP-8AFPだ。
お米以外にも利用できる汎用性の高さが導入のポイントに
導入の契機となったのは、今年4月に同農場の圃場で行われた同機による乾田直播の実演。「これまで乾田直播には、他メーカの播種機を使用していて、新たに導入するつもりはなかったのですが、お米以外にも汎用的に利用できるということで、それが導入の大きなポイントになりました」。それまで、米用、大豆用、麦用とそれぞれの播種機を使っていたが、クリーンシーダNTP-8AFPでは、播種プレートを交換するだけで、これら全ての播種に対応することができる。また栽培方法や品目に合わせた調整も可能で、スプロケットを交換するだけで6段階に株間が変えられる。「この1台で4月に乾田直播、7月中旬に大豆、11月下旬から麦を播くことができ、年間の播種作業を全て行うことができます」。
さらに最大8㎞/hの高速作業も選択のポイント。「作業スピードは今までの倍以上になっていると思います。しかもスピードを出しても安定的に種が落ちていると実感しています」。特に大豆の播種に関しては、近年の異常気象もあり単収を維持、向上させるには、「雨の合間を見て適期に播種するのがポイントです」。大豆で従来使用していたロータリー播種機の作業速度は3㎞/hとのこと。同機の最大8㎞/hの作業速度は限られた時間での適期播種に大きな力となる。
今シーズンが導入初となり、米、大豆の播種でクリーンシーダNTP-8AFPが使用された。気になるのは播種後の生育状況。乾田直播は9haで実施されたが、「点播なのでしっかり分けつして良い株になりました。来年はもう少し種の量を減らしても良さそうです」。同機では、ダブル播種プレートの採用によって、乾田直播でも欠株の少ない高精度な点播を可能にしており、無駄をなくし、種苗代を抑制することにも繋がりそうだ。収穫後の結果では「反収が9.8俵で満足のいく収量となりました」。また現在、大豆の生育も順調に進んでおり、収穫も間近だ。さらに11月下旬からは同機を使って初めてとなる麦の播種も行われる。
Point:適応種子の汎用性が高く幅広い作物に対応し、乾田直播の高精度点播も可能。さらに最大8㎞/hの高速播種で省力化に貢献する。
ここが一押し:高い汎用性と高速、高精度播種で機械コストを削減する
飼料用のトウモロコシも視野に 水田の有効利用を図る
「機械コストは生産者の悩みの一つです。汎用性はそれを軽減する一つの方法で、それを実現しているこの機械は良い播種機だと思います」。
三矢さんはこの汎用性を活かし、「この播種機なら飼料用のトウモロコシも播くことができます」と、さらなる展開も考えている。水田を如何に利用するのか。「大豆、麦に続く水田の有効利用が農業経営で重要になってくると思います」。
クリーンシーダNTP-8AFPが低コスト、高収益農業を目指す三矢さんにとって、さらに展開を広げる力になりそうだ。
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