異常気象はもう毎年のことで、特に今年は記録的な暑さ。野菜では思うような収穫にならず出荷が減少し、価格が高騰しているものも目立つ。契約などで独自販路を開拓してきた所などは、その影響が大きい。生産量の減少を高値で補うことはできないし、契約数量を満たすために奔走することになる。
その対策として、他産地との連携も進むが、まずは生産性の向上が必須。それを実現するための機械力と労働力の高度化が必要になる。その中で小川農具製作所の台形畦成形機が力を発揮していた。同機を導入した愛媛県の生産法人を訪ね、大規模野菜作における安定供給の実現について、その取り組みを聞いた。
養豚業から出る堆肥を有効活用したいという発想から野菜作を始める
愛媛県大洲市でキャベツ・玉ねぎを200haの規模で生産しているのが、農事組合法人たいよう農園。それぞれで愛媛県全体の生産量に対して、1/3にも及ぶ。「元々は養豚業を母体としていて、そこから出る堆肥を有効活用したいという発想から野菜作が始まりました」と、同農園で取締役専務を務める井上翔一朗さん(34歳)。時々の課題に挑戦しながら進化してきた同農園について教えてくれた。
設立当初は規模拡大による大量生産で大きな売り上げを目指すスタイルをとり、市場出荷を行っていたが「1年目は良かったのですが、2年目に相場が下落し大きな痛手を受けました」。結局生産物を畑にすき込むような事態になり、契約栽培へと舵を切る。これが経営の安定化へと繋がっていったが、次の課題として現れたのが、生理障害などによる欠品。納めるものがなく「市場から調達して納品することになりました」。それでは利益が出ない。そこで各地の生産者に自分たちのものをつくってもらう生産委託を始めた。それによって必要量の確保ができるようになったが、今度は商品が余るというリスクを抱え、「何千トンも収納できる冷蔵施設をつくりました」。それにより、安定的な出荷が進んだが、貯蔵した物に傷みが出ればその部分を取り除くという手間も生まれ、単価を下げて欲しいという要望もあり、それならばとカット野菜の加工場をつくり、付加価値のある加工品を生鮮品と共に冷凍食品会社などに販売する今のスタイルになった。
うねづくりの省力化を図るため台形4畦成形機を導入
作業速度が2㎞/h以上で綺麗な畦を成形
生産されるキャベツや玉ねぎは、十分な堆肥のもとで育ち、「えぐみが少なく、病気になりにくい」と商品価値も高い。高品質な原材料の供給で取引先から評価され、強い需要があり、供給力のさらなる強化が課題となっている。
圃場として展開しているのは主に元耕作放棄地。そこに堆肥を入れ、レザーレベラーで土を均質にし、サブソイラーによる硬盤の破砕で、大雨時の排水性を高めると同時に渇水時は多くの水にアクセスできるようにしている。また土をしっかり混ぜ合わせることで、連作障害の抑制にも繋げている。
しっかりとした品質のものを安定的に生産しながらスケールアップを図るための模索が続く。その取り組みの中、うねづくりの省力化を図るためにこの夏導入したのが、小川農具製作所の台形4畦成形機。それまで使っていた畦成形機では、十分な高さが出せなかったが、「1条ずつしっかりとした高さが出せ、排水性を高めることができています」。また作業速度も速く、2㎞/h以上で綺麗な畦が成形できているとのこと。
綺麗な畦で定植機が安定し、生育にも好影響
キャベツは1畦に1条づつ植えられ、定植機は2畦をまたいで2条ずつを植えていく。その際、「畦が綺麗なので車体が安定します。キャベツはほんの数センチ、植え付け深さが変わるだけで生育が悪くなるので、精度の向上は生育に結びつきます」。綺麗な植え付けにより、その後の手直しの手間がなくなり、ストレスと労力が減った。溝も鎮圧輪で均され、「定植機の足が取られるようなことはなかったと思います」。
また、畦成形の際に土の持ち回りが少ないことも特徴。ダキコマーズという機能があり、畦をつくるのに過度な土を必要としない。「少ない量で畦がたてられているように思います。最後に少し土が残る感じですね。多くの土を抱えなくても、畦始めのへこみや、途中で急に畦にならなかったりすることがありません」。機械に任せておける部分が多く、トラクターに搭載している直進アシスト機能と組み合わせて、夜間作業でも綺麗で真っ直ぐな畦ができる。
また個々の成形部をワンタッチで取り外しができるカチャスポ機構も評価の一つ。4畦成形機を簡単に平うね2畦に変形でき、キャベツでも平うねの玉ねぎでも使用できる。「農機の稼働率を上げることができます」。導入コストの低減に繋がっている。同農園の場合、キャベツの畦は60㎝、玉ねぎの平畦は150㎝、そこで夏に導入した4畦を5畦タイプへと改良し、150㎝の平うねを2つたてることができるようなった。5畦の場合、次工程が少しでもずれると、2畦をまたぐ定植機がうまく走れなくなるが、直進アシストの畦成形で精度を高め、異なる工程の畦同士をまたぐ場合でも誤差がなく定植がスムーズに進み、さらなる効率化を果たしている。今は5畦成形機の2台体制になっている。
Point:土の抱き込みが少なく、作業負荷が低減される機構を採用。スムーズに土を流しながら適度に締まって崩れの少ない畦成形を実現している。枕地に溜まった土を均す手間も削減。
ここが一押し:成形部の独立機構により畦形態の違う作物にも対応できる
ベテラン並みの生産性を得るための心強い味方
「畦成形が速く綺麗にできるようになり、定植が良くなり、その後の管理作業も楽になりました。これから先の収穫も楽しみです」。労力を削減しながら質の高い物を安定的に生産することに繋がり、さらなるスケールアップを進めるための力になっている。
現在、同農園で働く人は約100人。全国各地から人が集まる。農業高校を卒業したばかりの「18、19歳の若者が来ますから、どれだけはやくベテラン並みの生産性を手に入れてもらえるかが課題です」。その中で、最新機械は心強い味方になり新しく導入した畝立機は大きな役割を果たしていた。
㈱小川農具製作所:〒675-2402 兵庫県加西市田谷町676 TEL=0790-45-0006 FAX=0790-45-1868 https://www.unetate.jp/
担当販売会社:ヤンマーアグリジャパン中四国支社宇和支店