儲かる農業を実現しようと各地で様々な取り組みが行われている。規模拡大による生産コストの低減、品質向上による有利販売、あるいは販路多様化、6次産業、耕作地の高度利用など、多様な試みが実践されている。その中に共通してあるのは、現状に課題を見つけ、それを一つずつ解決していこうとする営みだ。
それが明日に繋がる道になる。昨日と同じではその場に留まることも難しい。農業環境が厳しさを増す中、今と向き合い、前へと歩みを進める生産者を訪ね、生産現場の取り組みを聞いた。人づくり、土づくりに力が注がれ、うね成形には小川農具製作所の台形4畦成形機KSDE−401が導入されている。
白菜生産をメインに、人と土に優しい儲かる農業経営を実践
茨城県結城市で白菜の生産をメインに、レタス、ネギを手がけているのが農業生産法人㈲菅井ファームだ。この地は元々養蚕が盛んで、結城紬などで知られていたが、時代と共に野菜作への転換が図られ、現在、茨城県は白菜の生産量が日本一で、その中でも結城市は有力な産地となっている。
同ファームで代表取締役を務める菅井好さん(62歳)と、専務取締役の菅井渉さん(32歳)が、生産現場の実際を語ってくれた。2人を中心に約10名ほどの社員・技能実習生で農業を展開し、春白菜は12ha、秋冬白菜は20haの規模で、「この地域は気候風土に恵まれ、冬場も農産物の出荷ができます」。白菜は秋冬物の出荷が10月から始まって、春物は6月まで出荷でき、その後、ネギ、レタスを生産し、一年を通じた農業生産が可能になっている。
生産している白菜は葉が柔らかく見た目も良い黄芯系品種で、年明けの物は頭部結束し、冬の寒さの中、甘みが増し人気が高い。冬期は出荷ができない地域もあり、引き合いは強い。
その中で実践されているのが「人と土にやさしく、儲かる農業経営です」。まず人づくりでは社会保険や、福利厚生を充実させ、過重労働を改善するため、栽培品目の転換なども図り、合わせて機械化も進め、働き方改革を実践している。働くモチベーションを上げ、チームワークの力を高め、大規模農業を展開している。「規模拡大には人手も必要ですし、やり甲斐を持って働いていただけるよう、働きやすい職場環境にすることを常に考えています」。またJGAPの取得も目指していて、働く環境の整備に力を入れる。
土づくりに関しては、耕地の高度利用を進める中で、高品質な作物を毎年安定して生産するために、連作障害などの病気にならないように取り組んでいる。まずは輪作体系を構築し、その上で緑肥などを鋤き込み、畑に良い肥料を施肥している。「病気にならない土づくりを進めています。新しい工夫も取り入れ、取り組みを進化させています。その結果として、良い野菜、美味しい野菜ができます」。
販路は農協からの市場出荷の他、契約栽培などの独自ルートも開拓。実需者からはその品質の高さが評価され、「中には生産している私たちに会いたいと、わざわざ足を運んでくださる人もいます」。品質の高さが販路拡大にも繋がる。「良いものを作れば、その分返ってきます」。
秋冬白菜のうね成形に台形4畦成形機「定植がしやすく、中耕などの管理作業もしやすい」
生産現場の課題に一つ一つ対応しながら、農業経営を進化させ成長していく姿がある。その生産現場で、秋冬白菜のうね成形に関して導入されたのが小川農具製作所の台形4畦成形機KSDE-401。以前は地域の工場で製作された、均平板と溝を付ける培土板のようなものを組み合わせた作業機を使用していたが、「こちらの成形機はきちっとした綺麗なうねをつくることができ、使ってみたいと思いました」。一度に4うねが成形できるもので、1うねに1条ずつ植え付けを行っていく。
秋冬白菜のうね成形は8月下旬から9月一杯行われる。大型トラクタに作業機を取り付け、圃場にうねがたてられていく。9月からは平行して手作業による定植も始まる。今年でシーズン2回目。スムーズに土を流しながら適度に締まって崩れの少ないうねをつくっている。「綺麗にうねが成形できて、定植もしやすいと思います。定植後、管理機を入れての中耕作業や追肥作業もやりやすいですね」。
また現場のニーズに応えた、ポイントマーカーPMS-401も評価が高い。うね成形と同時に、うねの上面に定植位置を窪みでマーキングしていくもので、「植え付けるところに穴があき、そこに苗を定植していきます。誰がやっても均一な仕上がりになり、品質を安定させることに繋がります」。
機械移植ではなく手植えをしているが「天候が悪くて土の状態が良くなくても、手作業なら確実に定植することができます。また人力に見合うだけの移植機となると何台も用意しなければならなくて、その運用が非常に手間の掛かるものとなります」。現場の最適化を図るプロの選択だ。
また生産現場では作業を止めないことが求められるが、「何かあればすぐ担当の方が対応してくれるので、助かります」。大規模生産におけるダウンタイムの軽減が図られている。
Point:綺麗なうねを成形し、定植がしやすい。またうね崩れが少なく定植後、管理機を入れての中耕や追肥の作業もしやすい。ポイントマーカーが定植位置をマーキングし、作業性が向上。
ここが一押し:適度に締まって崩れの少ないうねを成形し、品質向上に貢献する
喜ばれる野菜作りで儲かる農業
生産する面積が拡大すればその分管理も大変になるが「大規模での生産なのに、品質が高いと言ってもらえたときは嬉しかったですね」。常に高い品質のものを安定的に生産していくことが、大きな目標であり、そのために人づくり、土づくり、様々な工夫が行われている。その中で主力となる秋冬白菜の始まりの作業になるうねづくりでは、台形4畦成形機KSDE-401を選択。今より少しでも前に進むための意志がそこにある。
「喜ばれる野菜をつくっていきたい」。その強い想いが、利益のでる儲かる農業へと繋がっていく。その取り組みは今に留まらず、良いものを積極的に取り入れて積み重ねていく歩みであり、持続可能な農業の姿がそこにあると思えた。
農業生産法人 有限会社菅井ファーム:https://www.sugai-farm.co.jp/
㈱小川農具製作所:〒675-2402 兵庫県加西市田谷町676 TEL=0790-45-0006 FAX=0790-45-1868 https://www.unetate.jp/