輸入飼料が高騰する中、国産飼料に注目が集まっている。各地で様々な取り組みが行われ、土地利用型農業の新たな可能性として積極的に取り組む耕種農家も少なくない。畜産農家においても、自給飼料の生産に力を入れるが、人手不足や高齢化など課題も多い。
そこで今回、複数農家による共同生産で飼料調達を図ろうとする生産現場を訪ね、地域の酪農家によってつくられたコントラクターに、自給飼料生産の実際を聞いた。そこにはタカキタの汎用型微細断飼料収穫機SMR1021+SMR−MH3が使われ、飼料づくりの効率化と品質向上で生産者の期待に応えていた。
自給飼料確保を目的にコントラクター組合を設立
公社で収穫してもらっていたが、適期作業が難しく、品質に問題
宮城県北西部に広がる大崎平野東部に位置するのが涌谷町。水稲を中心に、小ネギやほうれん草など、施設野菜の生産が盛んに行われている。さらに畜産業も盛んで、水田では飼料用作物の生産も行われている。今回、同町で自給飼料の生産に取り組むコントラクター組合の涌谷町飼料増産組合にお伺いし、組合長の齋藤常雄さん(69歳)に飼料生産の実状を聞いた。また、組合員の鈴木篤さん(74歳)、菅原啓緒さん(41歳)、齋藤さんの息子さんで、㈱さいとう農場代表を務める齋藤常浩さん(44歳)にも同席頂いた。
以前は、「農業公社に依頼して飼料作物を収穫してもらっていましたが、それでは適期作業が難しい状況でした」。そのためサイレージの品質に問題があり、必要とする飼料の確保が難しかった。そこで、飼料作物の作付面積拡大と適期刈り取りによる品質向上、また安全な自給飼料の確保を目的に、2009年にさいとう農場をはじめ、4件の酪農家と1件の和牛繁殖農家によって涌谷町飼料増産組合が設立された。
タカキタの汎用型飼料収穫機を導入
その目的を実現するためにまず必要となるのは、新たな収穫機械。「山形県で開催されたタカキタの実演会を見に行きました」。そこで出会ったのが同社開発の汎用型飼料収穫機SMR1000。「良質な飼料づくりを可能にするにはこれだと思いました」。
2010年に同機を導入し、WCS用稲やデントコーンの増産をスタート。作付面積を拡大し、適期収穫による良質なサイレージづくりに取り組んだ。その後、受託圃場が増えたことで、作付をさらに増やし、機械装備の充実を図り、収穫機を追加。それまでの機械よりホッパ容量が大きく、ハーベスタの刈り取り性能が向上し、微細断機能も備えた汎用型微細断飼料収穫機SMR1020を導入し、昨年には後継機のSMR1021+SMR-MH3も加わった。これら3台の収穫機を使って、現在は5名の組合員に6名のオペレーターが加わり、デントコーン65ha、WCS用稲15haの作業受託を引き受けている。
デントコーンもWCS用稲も刈り取れるのが大きな魅力
微細断することで発酵品質が向上し、牛の嗜好性が高まる
同組合がタカキタの飼料収穫機を使い続ける理由は、その汎用性にある。「我々にとって、デントコーンとWCS用稲を1台で刈り取りできるのが、この機械の大きな魅力です」。それぞれの作物に合わせて刈取部を交換する必要もなく、作業幅180㎝のマルチヘッダで、デントコーンやWCS用稲に対応し、それ以外にもムギやソルゴーなどの長稈品種や長大作物も収穫することができる。
また、「刈り取った作物を微細断することで、餌としての質が全く違ってきます。発酵品質が向上して、牛の嗜好性が高いサイレージになります。これもこの機械の大きなポイントです」。20枚の切断ナイフを使ったアップカットシリンダ方式の微細断機能を備えたハーベスタ部の最小理論切断長は6㎜で、飼料作物に合わせて切断長は11㎜、19㎜、29㎜にも調節できる。微細断された作物は最大積載量2㎥のホッパーを搭載したベール成形室で高密度に圧縮されネットで結束、梱包され高品質なロールベールに仕上げられる。
さらに、「コーンハーベスタを装着したトラクタでデントコーンを収穫する際、圃場の中で刈り取りのできない箇所がありましたが、この機械なら端から端まで全部綺麗に刈れます」。運転操作は丸ハンドル仕様で、自在な方向展開が可能。走行部はクローラ式なので、直進、旋回性が良く、車体水平制御によって車体の左右を水平に保ち、湿田でも安定作業が可能になっている。
他にも、各部の稼働状況は小型多機能コントロールボックスに図でわかりやすく表示される。メンテナンス作業やネットの交換は、機体両側のカバーが上下に開閉するガルウイング方式を採用しているので容易に行うことができる。
「とにかくこの機械は能率が良い」と、信頼は厚い。刈り取りをしながら高密度のロールベールがつくられ、収穫作業を効率よく進めていく。同組合ではこの後工程の機械装備も充実させ、同社の自走ラップマシーンを5台使い、ロールベールのラッピング作業を行っている。「ロールベールをフレッシュな状態ですぐにラッピングすることは、良質なサイレージづくりには欠かせません」。大きな圃場では収穫機1台にラップマシーン2台が動く。
Point:WCS用稲・麦の長稈品種、トウモロコシ、ソルゴーなど長大作物の刈取りに対応するマルチヘッダ搭載。微細断で、高品質のサイレージ調製を実現する。
ここが一押し:汎用型なので、この1台で多様な飼料作物に対応できる
「この機械がなかったら酪農は辞めていたかもしれない」
適期作業のためには機械のダウンタイムの最小化も重要になるが、「タカキタさんは機械に何かあればすぐに来て対応してくれます。アフターサービスには十分満足しています」。サポート体制も充実しているようだ。
「自給飼料をつくっていたから飼料の高騰があってもなんとか乗り切り、農業を続けてこれました。この機械がなかったら酪農はとっくに辞めていたかもしれません。私の酪農経営を変えてくれた機械です」。
生産コストが高まり、生産現場では厳しい状況が続く。その中で、農業を持続するため、各地で懸命な取り組みが行われているが、そこに機械の果たす役割は大きい。自給飼料の増産を進める上で選択された、汎用型微細断飼料収穫機が地域農業の持続に貢献していた。
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