仕事と生活の調和を意味するワークライフバランス。すっかりお馴染みになってきた言葉だが、その質においてはいささか心許ない職場もあるだろう。農業もその一つだ。季節によって労働量に大きな差があり、繁忙期は休みがなく、農閑期は仕事が全くないという所も。その全体でバランスをとっているとも言えるが、できれば日々のバランスをもう少し大切にしたい。
労働環境の改善は農業持続の要点でもある。果樹栽培では夏場の草刈りに追われている生産者も少なくなく、炎天下の作業でもあって、肉体的負担は大きい。そこで力を発揮しているのが和同産業のロボット草刈機ロボモアKRONOS(クロノス)だ。導入した現場で、その実際を探った。
小規模りんご栽培でロボット草刈機を導入
今回お訪ねたしたのは、群馬県西南部に位置する甘楽町。比較的温暖で、標高差もあり、変化に富んだ自然条件の中、多様な農業が行われ、稲作の他、生鮮野菜やこんにゃく芋、山間部ではそばなどの作物が栽培されている。そこで60aの規模でりんご栽培を行っているのが井田りんご園。他にも20aで山うどを栽培している。3年前に実家に就農し、園主を務める井田豊明さん(41歳)にお話を聞いた。
同農園では8品種のりんごを栽培し、主力はふじ、群馬県生まれの陽光とぐんま名月、そしてシナノゴールド。収穫は早い品種で8月下旬から始まり、11月下旬のふじの収穫まで続く。労働力は本人と母親が主となり、繁忙期に5名程のアルバイト。収穫したりんごは、6割以上が同園に来園した消費者へ直接販売している。残りは直売所での販売。「以前はJAに出荷していましたが、今はBtoCでの販売が中心です。シーズン中に1500〜1600人のお客様がここにりんごを買いに来られます」。SNSを活用するなどして直接消費者と繋がり、収益性の高い農業を目指している。
その中で生産コストの低減も図り、作業効率を向上させることも大きなポイントになっている。そこで井田さんが就農してすぐに取り組んだのが、園地の整備。それまで8区画あったものを1区画に集約した。それにより規模は小さくなったが、無駄を省き作業効率を向上させることになった。
それでもなお草刈り作業は大きな負担で、そこに費やされる時間と肉体的負荷は大きい。そこで、この課題解決のために、今年の2月に導入したのが和同産業のロボット草刈機ロボモアKRONOSだ。「就農前からロボット草刈機の存在は知っていました。草刈り作業を省力化するのに価格も手ごろだったので、小規模の果樹農家にはもってこいの機械だと思いました」。
フェアウェイの様な綺麗な仕上がり
下草刈りの作業期間は、3月中旬から9月末までの約200日間。今までは刈払機と歩行型のモアを使用して行っていたが、それを同機で代替した。まず60aの園地を約20aの3区画に分けてエリアワイヤーと充電ステーションを設置し、KRONOS1台を導入した。エリアワイヤー内を超音波センサーで障害物を検知し、ランダムに走行しながら草刈りを行っていく。地面に凹凸があっても3輪駆動と独自のタイヤパターンで乗り越え、バッテリー残量が少なくなると自ら充電ステーションへ戻り、充電が完了すると作業を再開する。起動や作業設定はスマホから行える。
それでもなお草刈り作業は大きな負担で、そこに費やされる時間と肉体的負荷は大きい。そこで、この課題解決のために、今年の2月に導入したのが和同産業のロボット草刈機ロボモアKRONOSだ。「就農前からロボット草刈機の存在は知っていました。草刈り作業を省力化するのに価格も手ごろだったので、小規模の果樹農家にはもってこいの機械だと思いました」。
仕上がりは、「ほとんど刈り残しもない状態で、その綺麗さに驚きました。ゴルフ場のフェアウェイの様で期待以上です」。
1エリアで2〜3日間稼働させると次のエリアへ移動する。それを繰り返すことが草刈り作業となった。「除草作業に年間どのくらい時間を掛けているか計算してみたのですが、今までだと1シーズンで40日ほどを草刈りに当てていました。それがKRONOSの導入によって、メンテナンス時間も含めて除草作業に掛けた時間は3日間ほどになりました」。草刈りに費やしていた時間の大幅な削減を実現した。
また予想していなかった嬉しい効果も表れた。「ここは中山間地なので、シカやイノシシの獣害が多く発生していたのですが、夜間もKRONOSが稼働していると警戒して園地に近寄らなくなりました」。
草刈り作業に充てていた時間と体への負担が軽減したことで、井田さんには新たなことに取り組める余裕が生まれた。「土壌改良の勉強と実践に時間を割くことができました。結果として収量は例年の倍近くに増えています」。生み出された時間が、りんごづくりの新たな可能性を広げている。
Point:手間の掛かる草刈り作業を自動化。作業負担を大幅に軽減し、草刈りに費やしていた時間から作業者を解放し、ワークライフバランスの質を向上させる。
ここが一押し:草刈りに充ていた時間を削減し、余裕を生み出す
ロボット草刈機が生活を変える
生み出された時間は生活にも潤いを与える。「今までだとシーズン中、休みがほとんど取れない状態でしたが、このKRONOSを導入したことで余裕ができ、今年は連休を取ることができました。これから農業にはワークライフバランスが大切になると思うのですが、その質を上げることに繋がります」。
スマート農業やロボット農機の導入と聞くと、大規模農家での取り組みをイメージするが、KRONOSの導入は、小規模農家にとってみても大きなメリットをもたらしているようだ。「経営の形にもよりますが、導入に悩んでいるのであれば、生活が変わりますよと伝えたいですね」。KRONOSが果樹農家の農業を変えていた。
なお、和同産業では2023年1月に同機をマイナーチェンジ。