果樹栽培は労働時間が長く、労働集約型な構造となっている。ブドウ栽培であれば、剪定やジベレリン処理、摘粒作業、袋かけ、そして収穫等、人の手による作業が多い。さらに、下草管理にも多くの時間と労力が必要となり、生産者の負担は大きい。そのため、果樹栽培では農地集積・規模拡大が難しく、遊休化してしまう農地も増える。
規模拡大のためには軽労化を図り、労働負荷を軽減することがキーとなる。その課題解決の一つとして期待されるのが、ロボットによる草刈り作業の自動化だ。和同産業のロボット草刈機ロボモアKRONOS(クロノス)を27台導入した生産者を訪ね、遊休農地を集積した大規模果樹経営の実際を探った。(記事中の数値・状況は2021年11月現在)
遊休農地を集積して農園を設立
今回訪ねたのは、長野県南部に位置する松川町。町の中央を南北に天竜川が流れ、水はけのよい土質と寒暖差のある気候は果樹栽培に適し、“くだものの里”と呼ばれ、同町の果樹生産は農業産出額の約7割を占める。そこでブドウ11ha、柿6haを経営しているのが㈱たけむらふぁーむ。27名の従業員が生産に携わっている。同社取締役の松本朗彦さん(64歳)に話を聞いた。
「私達は建設資材の製造販売を行っている地元企業の竹村工業㈱が母体になります」。竹村工業は地域貢献の一つとして、遊休農地を復活させて農業を維持し町を活性化しようと、6年程前から圃場を約20ha借り受けて米づくりを始めた。収穫した米は自社の社員で分け合う他、児童養護施設、子ども食堂へ寄付している。しかし、「このまま農地を増やし活動を広げていくと、お金が出るばかりになり私達の負担が増えていきます。地域貢献、社会貢献を維持していくためには、売上が出せる活動が必要だと考えました」。
そこで農業で利益を生み出すため、遊休農地になっていたブドウや柿の園地を購入・借り受け、3年前にたけむらふぁーむを設立した。手がけるのは、ブドウが長野県の新品種クイーンルージュを中心に、シャインマスカット、ナガノパープル。柿は干し柿に加工する市田柿。それらをほぼ全て苗木から育てはじめた。来年には本格的に収穫し、ブドウ、柿それぞれ100tを目指している。
30aに1台の割合で27台を導入
「最初の1年目はひたすら園地と苗木の手入れです」。その時、下草管理に使用していたのは乗用の草刈機で、特にロボット草刈機への関心は無かったが、取引先の紹介で、和同産業のロボット草刈機ロボモアKRONOSを導入しているりんご農家の視察に行くことになった。そこでKRONOSを一目見て、「これは良いと思いました」。それで昨年5月にまずは最初の1台を導入した。
早速30aの園地でその働きぶりを確認してみると、「30aの草刈りであれば、1人が乗用モアで2時間程の作業になりますが、これは自動で動き、手間をかけないで下草が綺麗になりました。これで仕事が楽になると実感し、高い評価に繋がりました」。この結果を見て、11haのブドウ園地の内、9haにクロノスの導入を決めた。
「去年から今年にかけて、合わせて27台のクロノスを導入しました。これは正解でした。本当に園地が綺麗になりました」。園地毎に多少の広さの違いはあるが、およそ30aに1台の割合でKRONOSが働いている。また柿の園地に関しては、「柿はまだ幼木なので導入していませんが、あと何年かすれば6ha分をKRONOSに任せるつもりです」。
KRONOSが稼働するのは4月から10月末までの約200日間。設置したエリアワイヤー内を超音波センサーで障害物を検知しながら、3輪駆動と独自のタイヤパターンによる高い走破性でランダムに走行しながら草刈りを行う。バッテリー残量が少なくなると自ら充電ステーションへ戻り、充電が完了すると作業を再開。これを天候、昼夜問わず繰り返し、ブドウ栽培で最も忙しい期間の下草管理をKRONOSが請け負う。
「夏場は24時間。それ以外の時期は、作業面積に合わせて12〜24時間稼動しています。モーターで動くので騒音もなく、夜間動いていても近隣に迷惑をかけることもありません」。起動や一日の作業時間の設定、変更はスマホから簡単に行え、PINコードを入力しないと動かないので盗難防止にも役立つ。また、電源が確保できない園地では太陽光発電式充電ユニットの使用もでき、27台中3台は太陽光発電で稼働している。
Point:作業負担が大きい草刈り作業を自動化することで、作業者の草刈り作業に費やしていた時間を開放する。軽労化を図り、生産性向上に貢献する。
ここが一押し:草刈り・帰還・充電全て自動で美しい園地に
草刈りの労働力と時間を他の仕事に
「今までだと20日に一度の割合で園地の草刈りに回っていました。全ての園地を刈るのに20日間程かかっていましたので常に草刈りをしている状態でした。それを今ではKRONOSが全部やってくれます」。草刈り作業に充てていた労働力と時間を他の仕事に回すことができ、軽労化を図り労働生産性を向上させることができる。KRONOSが大規模果樹経営の頼れる力になっている。
地域に美しい景観を提供するKRONOSは、地域の方に親近感を抱かれているようで、農園のイメージアップにも繋がっているようだ。
現在、KRONOSを導入して栽培されたブドウをPRするためプロモーション動画を作成しており、今後メディアをはじめ、多方面に情報発信していく予定だ。KRONOSは農園のプロモーションにも貢献する。単なる労働力を補完する機械以上の付加価値をブドウにもたらすかもしれない。
ロボット草刈機ロボモアKRONOS 《主な特長》①3輪駆動と独自のタイヤパターンが高い走破性を実現。②超音波センサーにより障害物を検知し減速。フロントカバーセンサーにより障害物との接触を検知し安全かつスムーズに回避する。③常に刈刃モーターの負荷をチェックし、刈取負荷に応じて走行速度を制御。④最大作業領域3000㎡エリア内をランダムに走行しながら草刈りをする。⑤スマートフォンで状況確認や操作が可能。⑥自動で充電、自動で作業再開。⑦本体を持ち上げるとセンサーが感知し作業を停止。⑧薄型フリー刃を使用。右回転・左回転を切り替えながら草刈り作業を行い、切れ味が長持ちする。製品説明サイト
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