“農業は草との闘い”。栽培品目は様々あるが、どの分野でも除草は疎かにできない仕事になっている。雑草が生い茂れば農産物の生育に影響を与え、病害虫の発生源になる。さらに景観にも好ましくない。農業にとって草刈りは避けて通れない。しかしその仕事はきつく、夏場の炎天下ならなおさらで、肉体的にも精神的にも負荷は大きい。“誰か代わりに草刈りをしてくれないだろうか”そんな想いは多くの生産者が抱く偽らざる気持ちに違いない。
そこで、その想いに応えて登場したのが和同産業のロボット草刈機ロボモアKRONOS(クロノス)だ。生産者に代わって自動での草刈り作業を実現した。導入した現場で、その実際を探った。
草刈りが大きな負担。それでも刈らない訳にはいかない
今回お訪ねたしたのは、山形県中央部に位置し、最上川が南北に流れる朝日町。内陸性気候で寒暖差が大きいことを利用して果樹栽培が盛んに行われており、最上川の両岸には河岸段丘があり、肥沃な土を利用して栽培されるりんごが特産となっている。そこで桃をメインに果樹栽培に取り組む堀農園の堀誠さん(60歳)に話を聞いた。
同園では、桃1.3ha、ブドウ60a、リンゴ50a、西洋なし(ラ・フランス)30a、サクランボ20aの規模で果実を栽培し、他にも60aで稲作を行っている。労働力は本人の他、3名を雇用。販路は卸業者との取引が中心で、桃は卸業者を通じてその多くが海外へ輸出され、残りがギフト商材として国内流通している。また、同町ではワインづくりが盛んで、生産されたブドウはワイン用原料としてJAへ出荷されている。「父親の代まではリンゴをメインにブドウなどに取り組んでいましたが、私の代になってからリンゴの園地を桃やラ・フランス、サクランボに転換しました」。リンゴよりも栽培管理がしやすく、収益性の高い果樹を複数展開しながら、年間を通して取引先のニーズに対応し、より手間の少ない、儲かる農業を実践している。
その中でもメインとしている桃は、収穫時期の異なる4品種を栽培。「約2週間のスパンで収穫が続いていくようなサイクルとなり、8月から9月の20日頃までリレーできるようにしています」。他の果樹ともなるべく収穫時期が重ならないよう工夫され、限られた労働力で効率の良い働き方に注力している。
その中、草刈り作業も行わなければならず、乗用モアーを使って、効率化、軽労化を図っているが、大きな負担になっている。「草刈り自体は何の収入にもならない仕事です。それでも刈らない訳にはいきません」。
コロナ禍の補助金を活用してロボット芝刈機を購入
近隣で導入した畑がゴルフ場のようになっているのを見て
そんな折、近隣の若手生産者が試験的に和同産業のロボット草刈機ロボモアKRONOSを導入した。その様子を実際に見学し、話も聞いてみて、「ロボットが草刈りをしている畑を見て驚きました。凄く綺麗で、ゴルフ場みたいになるんだと思いました」。タイミング的にもコロナ禍による補助金を活用することができたこともあり、和同産業と共に県内でKRONOS普及に取り組む販売店の㈱鈴商に相談した。「補助金を活用するのであれば草刈り作業の軽労化だろうと考えて、2年前にKRONOSを2台導入しました」。
KRONOSの最大作業領域は約30aで、それに等しい大きさを持つ桃の園地2ヵ所を導入対象にして、「それぞれにエリアワイヤーと充電ステーションを鈴商さんに設置してもらいました」。そこでは電源がとれたが、確保できない場合はオプションで太陽光パネルも用意されている。「稼働期間は4月から収穫する10日前までになります」。この期間、エリア内を刈取負担に応じて走行速度を制御し、ランダムに走行しながら草刈りを行っていく。
5日間ぐらいで30aを綺麗に刈り上げる
地面に凹凸があっても3輪駆動と独自のタイヤパターンで乗り越え、バッテリー残量が少なくなると自ら充電ステーションへ戻り、充電が完了すると作業を再開する。これを天候、昼夜を問わず繰り返す。「音も静かなので、夜間でも近隣の迷惑になりません」。もしトラブルが発生しても、「鈴商さんがすぐ対応してくれるので安心です」。
KRONOSの仕事ぶりの評価は、「5日間ぐらいで30aの園地を綺麗に刈り上げます。ここを草刈りしなくても良いと思うと、肉体的にも精神的にも気分が楽だしそれが最高です」。さらに支柱周りや株元に関しても、「乗用モアーだと何回も切り返さないといけないので面倒な作業でしたが、スペースが狭くて入れなかった箇所でも綺麗に刈れているので気分が良いですね」と、その仕上がりには満足な様子。他にも、「KRONOS導入で、園地の景観を良くすることにも繋がっています。あれぐらい綺麗に草を刈っていれば、しっかり手が掛けられた、間違いない美味しいものだと思ってもらえます」。
Point:3輪駆動でランダムに自動走行しながら薄型フリー刃で、エリア内の草を自動で刈る。従来の草刈り作業の労力を軽減し、収益性の高い農業を実現する。
ここが一押し:昼夜問わず自動で草刈り、美しい園地に仕上げる。
KRONOSがあるから仕事が回っている。今後は導入台数を増やしていく予定
今は全体としてまだ2ヵ所の園地に導入しただけで、それ以外は乗用モアーなどによる草刈り作業だが、KRONOSの効果を実感している。「年齢と共に、以前より働けなくなっていますが、その分をKRONOSがカバーしてくれている感じです。KRONOSがあるから仕事が回っているのかもしれません。今後は導入台数を増やしていく予定です」。労働力と時間の有効利用に繋がっていく。
「高値で取引できる収益性の高い品種に手をかけ、高品質なものにしていくことに時間を取っていきたいと思っています」。堀さんが目指すその農業の中で、KRONOSの貢献が期待されていた。
草刈り作業で悩んでいる果樹農家に対して、「様々な方法があって、考え方はそれぞれ違うと思いますが、まずは実際に使われている園地を見て欲しいですね。私だけかもしれませんが、草刈りに対して本当に気持ちが楽になりますよと伝えたいです」と堀さん。新しい技術によって、新しい農業に踏み込んだ果樹農家の実感があった。